過去の動画で「組み込みの業務委託ってWeb系に比べて単価安くないですか?」みたいなコメントをいただきまして、確かに私もそうだと思います。
なぜそうなるのかということについて話します。
はじめに
まず結論から言いますと、組み込みって投資回収にかかる期間が長いです。
Web系と開発のプロセスも違いますし、
製品開発時に基板を起こしたり、出来上がったものを収める箱とか作るものの、
結局その製品開発全体で見ると費用のほとんどは人件費です。
なので、業務委託の単価はちょっと上げづらいです。
詳細を話していきます。
Web系と組み込みの開発プロセスの違い
まず、Web系と開発のプロセスが違う件について。
Web系の場合、「こういう仕様で作ります」と決めたら、
短期間で作り込んで早々にリリースして、まずは売り上げを確保します。
その後、売上げや状況を見ながら、機能を追加したり、修正するなりして拡大することができます。
もし想定通りにいかなかったにしても、すぐ廃止できる。
比較的短い期間で低コストで作れるのがWeb系開発です。
一方の組み込みだと、発売後の機能追加や修正は基本的に難しいです。
発売前の段階で相当気を使って作り込まないと、市場に出した後にトラブルになると損失を抱えがちです。
実際、開発すると分かるんですけど、想定される動作に合わせて開発したとしても、
いざ市場に出すと「なんでこんなことするんだろう?」と思うようなことをお客様は普通にやってしまいます。
そのため、そうした予期せぬ操作も考えて作り込まないと、発売した後が大変になることがあります。
ここまでまとめると、Web系開発は「小規模に短期間でリリースできる」、組み込み開発は「大規模に長く時間かけてやる」、となります。
ゲームで例えると、Web系がスマホアプリのゲーム、組み込みはスーファミとか64とか、カセットタイプのゲームです。
組み込み製品開発が長期間になる理由
組み込みには長い開発期間があるんですけど、これには事情がありまして、
Web系のようにとりあえず作って、えいやっ、で発売できないのです。
さっき言った、お客さんが思いもよらぬ使い方をする、もありますが、
電気関係って法律が厳格で、法律に適合した形で設計しないと、認証が取れないことがあります。
認証が取れていないと、制限がかかって販売できないことがあるので、法律に合わせた設計が必要になり、この要求が高いのです…。
色々試験で確認していきますが、特にハード系だと静電機試験は大変で、
作ってみなきゃ分からないところがあったりするので、ここらへんはハード屋の腕の見せどころだったりします。
あと最近だと、そのIoTでWi-Fi繋いでみたいな話も増えていて、Wi-FiにしてもBluetoothにしても
電波を発するものはさらに要求が高くなります。こうしたことを踏まえて開発しなければなりません。
さらに、定価数万円で販売しているような製品だと、部品単価を何銭の単位で削ります。
部品単価を削るんだけど設計品質を担保しないといけません。基本的に値段を落とすと、品質も落ちますよね。
しかし設計では、品質は保ったまま値段を下げるにはどうすればいいか考えなければならず、
こうしたことから、設計するにしても評価するにしても時間がかかりがちなんですよね。
結果として人件費がどんどん増えていきます。
組み込み製品の損益分岐、どの費用を削るのがよいか
そのため、組み込み製品は利益が出るまでに結構時間がかかります。
開発費を回収するまでには相当な数を販売しなければならず、発売したらすぐ投資回収できるって感じでもないです。
数年単位で売れ続けて、やっと利益化できる時間感覚です。
もし売れなかった場合は、開発費と売上利益の差額分が全部に負債になってしまいます。
例えば製品開発全体で金型代が400万円、部品代は100万円、人件費が1800万円だったとしたら、
あなただったらこの3つのうちどれを一番削れると思いますか、という話なんですよ。
大きな額を要するところが大きく削れそうだと思いますよね。だから、人件費はちょっと上げづらいですね。
売れればその分利益になりますけど、売れなかった場合の負債を考えると、人件費は抑えたいと発注する側は考えるでしょう。
マネジメントできるようになると一段上がる
そして、100万円/月の組み込み案件があるかも聞かれますが、エンジニアとして取り組む場合は到達しないかなと思います。
組み込みに限った話ではないんですけど、マネージャークラスになれば、100万の単価は行きますね。
ただ、マネージャーになるにしても開発に対する知識があるとか、チーム全体をまとめられるマネジメント能力があるとか、
作りたいと考えているものが本当に実現可能か判断をするとか、開発より上の仕事をしないと100万にはいかないでしょう。
そのため、いきなり100万円/月は難しいので、まずエンジニアとして実績を積んでリーダーの仕事をしていくとよいです。
組み込み開発の案件単価はWeb系より確かに安いんですけど、低単価だとしても組み込みをやる魅力とは、
だからと言って、じゃあWeb系に、と考えるのはちょっと早い。組み込みには組み込みの良さがあります。
組み込みは他業種にはないメリットあり
Web系だとフレームワークが変わったり、新しい言語に切り替えるとか、その時々で求められる内容が変わりますが、
組み込みは基本CかC++で開発するので、一旦身につけてしまえば、やることが変わっても設計時に悩まなくて良いです。
単価は安かったとしても、かかる労力はWeb系と比べると少ないです。これは組み込みならではの良さだと思います。
また、組み込みはあらゆる産業の土台なので、あまり目立たないんですけど、
物作りの現場では確実に組み込みエンジニアがいて、裏で作り込んでいます。
そのため、物作りがなくならない限りは、組み込みエンジニアの仕事がなくなることはないでしょう。
あと、現実のモノになるため、なんだかんだ良いですよ。目の前で形あるものが動くってのは結構楽しいですね。
動かないとそれはそれでちょっとおやおや?となりますけど、
画面上だけで動くよりも現実のものとして動いた方が、作ったものに対する見え方も違うのかなっていうような気はします。
ということで、組み込みエンジニアの業務委託費が安い理由を紹介させていただきました。
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