小学校でプログラミング教育が必修化されてから数年が経過しました。
しかし、実際の学校現場では、プログラミング教育がどのように行われているのでしょうか。
合同会社タテプロでは、小学校のプログラミング授業に外部講師として参加する一方、
子どもたちが無料で学べるプログラミング教材「Blockly Games 2」の開発にも取り組んできました。
その活動の一環として、2026/10/22(木)、S市教育委員会の担当者とプログラミング教育の現状や教材の導入について意見交換する機会をいただきました。
そこで感じたのは、学校によってプログラミング教育の取り組み方や支援体制が大きく異なる可能性があるということです。
今回は、教育委員会との意見交換で分かったことと、私たちが実際に小学校で授業を支援して感じたことを紹介します。
※本記事では、関係する自治体名をS市・T町として記載しています。
また、限られた学校・自治体での経験に基づく所感であり、
全国の教育現場の実態を網羅的に調査したものではありません。
S市では多様なプログラミング教材が活用されていた

今回意見交換を行ったS市では、すでに小中学校でさまざまなプログラミング教材が使用されているとのことでした。
具体的には、以下のような教材です。
- Scratch(スクラッチ)
- microbit(マイクロビット)
- スモールビー
- LEGO SPIKE(レゴ スパイク)
特に印象的だったのは、プログラミングそのものを学習の目的とするのではなく、何かを実現するための手段として捉えているという考え方です。
例えば、画面上でキャラクターを動かすだけでなく、センサーやモーターなどを使い、実際のものづくりを通じて課題を解決するような学習も重視しているとのことでした。
また、各学校にはICT支援員が配置され、教材の準備や授業中のサポートなども行っているそうです。
プログラミングに詳しい教員が一人ですべてを担当するのではなく、支援員などの協力を得ながら授業を進められる体制があることも印象に残りました。
プログラミング教育の実施頻度については学校ごとに異なるものの、各学期に少なくとも1回は取り組むことになっているとの説明を受けました。
T町での授業支援では異なる課題を感じた

一方、私たちがプログラミング授業の外部講師として関わっているT町の小学校では、少し異なる状況を経験しました。
授業の進め方や使用する教材について、現場で検討しながら取り組んでいく必要がありました。
プログラミング教育として何を教え、どのような学習成果を目指すのか。そうした部分から考える必要があると感じたのです。
実際の授業支援を通じて、子どもたちがプログラミングを学ぶ機会を設けるには、教材を用意するだけでは十分ではないことを実感しました。
もちろん、これは私たちが関わった範囲での経験です。T町全体の教育状況を評価できるものではありません。
しかし、S市で伺った取り組みと比較すると、教材の活用状況だけでなく、授業を支える仕組みにも違いがあるのではないかと感じました。
無料のプログラミング教材を提供すれば使ってもらえるのか?

タテプロでは、子どもたちが無料で学べるプログラミング教材「Blockly Games 2」の開発に取り組んできました。
Blockly Gamesをベースに、子どもたちが楽しみながらプログラミングの基本的な考え方を学べるようにした教材です。
また、企業の協賛を受けることで、学校や児童に費用負担を求めずに教材を提供できないかという構想も検討してきました。
今回のS市教育委員会との意見交換では、企業のロゴや商品がゲーム画面に登場することについて、基本的に問題ないという見解をいただきました。
これは私たちにとって一つの大きな収穫でした。
ただし、教材を実際に採用するかどうかは各学校の先生が判断するとのことです。
導入時期も新年度に限定されず、必要に応じて採用される可能性があるそうです。
ここで、改めて考えさせられることがありました。
無料で教材を提供できたとしても、本当に学校で使ってもらえるのでしょうか。
例えば、S市のように、すでに多様な教材を活用してものづくりや課題解決型の授業を行っている学校では、
Blockly Games 2のような基礎的な教材に新たな需要があるとは限りません。
一方、プログラミング教育の進め方を模索している学校では、教材を提供するだけでなく、
授業の進め方や指導方法まで支援する必要があるかもしれません。
つまり、次のような課題が考えられます。
- 教材が充実している学校では、新しい教材を導入する必要性が低い可能性がある
- 教材の活用が進んでいない学校では、提供するだけでは使われない可能性がある
- 教員向けの指導マニュアルや児童向けワークシートの整備が必要になる
- 学校ごとに導入支援を行う場合、提供する企業側の負担が大きくなる
もちろん、すべての学校がこのように二分されるわけではありません。
しかし、教材を無料で公開することと、実際の教育現場で継続的に活用されることは、別の問題なのだと感じました。
学校が求めているのはAIやものづくりの教材?
今回の意見交換では、今後の教材ニーズについてもお話を伺いました。
その中で挙がったのが、AIを学べる教材、特に「フィジカルAI」に関するものでした。
フィジカルAIとは、AIがセンサーなどを通じて周囲の状況を認識し、ロボットなどの物理的な動作につなげる技術です。
これを学校向けの教材として実現するには、プログラミングだけでなく、電子回路やセンサー、機械的な構造なども考える必要があります。
私たちにとっても興味深い分野ですが、教材として開発するには相応のハードルがあると感じています。
また、LEGO SPIKEの販売終了についても話題に上がりました。
こうしたロボット教材の代替となる製品を検討するのであれば、機能面だけでは不十分です。
学校現場では多くの児童が繰り返し使用するため、耐久性や落下時の耐衝撃性なども求められます。
一般的な電子工作用の開発ボードを、そのまま学校用教材として提供できるとは限らないのです。
こうした点からも、学校向けのハードウェア教材には、通常の電子工作教材とは異なる設計思想が必要だと感じました。
Blockly Games 2の追加開発はいったん保留に
今回の意見交換を通じて、学校教育向けの教材開発について多くのことを考えるきっかけを得ました。
当初は、無料のプログラミング教材を提供すれば、多くの学校で活用してもらえるのではないかと考えていました。
しかし、実際には学校ごとに教育方針や支援体制、求める教材が異なります。
仮に教材の導入が決まったとしても、学校ごとの説明や導入支援、運用サポートなどに多くの工数が必要になる可能性があります。
企業協賛によって無料提供を実現する構想についても、こうした運用負担と収益のバランスを考えなければなりません。
そのため、Blockly Games 2については、現時点で追加開発を積極的に進めることはせず、具体的な需要が見えてきた段階で再検討する方針としました。
これは、プログラミング教育への取り組みをやめるという意味ではありません。
これまで開発した教材を活用しながら、学校現場でどのようなものが本当に求められているのか、引き続き考えていきたいと思っています。
プログラミング教育に本当に必要な支援とは?
今回、S市教育委員会との意見交換と、T町での授業支援を振り返って感じたことがあります。
それは、プログラミング教育を充実させるには、教材そのものだけでなく、教材を活用できる環境や支援体制が重要なのではないかということです。
プログラミング教材は、無料で利用できるものも含め、すでに数多く存在しています。
しかし、それらを使って何を教えるのか、授業をどのように進めるのか、子どもたちにどのような力を身につけてもらうのか。
こうしたことを考え、授業として実践するには、教材とは別の支援が必要になる場合もあるはずです。
今回の経験だけで、全国の自治体に大きな格差があると結論づけることはできません。
ただ、私たちが接した教育現場の間でも、取り組み方には違いがありました。
民間企業として教育を支援するのであれば、単に教材を開発して提供するだけでなく、それを必要とする学校にどのように届け、活用してもらうのかまで考える必要がありそうです。
タテプロでは今後も、学校現場での活動を通じて、プログラミング教育に本当に役立つ教材や支援のあり方を模索していきたいと思います。
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